小型自走機械群による超精密生産機械システム 第104報：ピペット振動による局所流動を用いた新しい細胞操作方法の提案

摘要

卵細胞は極体付近に核と呼ばれる球状構造物を持っており、この核は細胞の再生と生存に不可欠なものである。顕微受精においては核の損傷を防ぐため、特定の位置に卵細胞を固定し、インジェクションピペットを穿刺しなくてはならない。また核移植においては、DNA 溶液を卵細胞の核部分に注入するために、核の位置を決めて卵細胞を固定する必要がある。従来の装置では、ホールディングピペットやインジェクションピペットを巧みに操作することによって、卵細胞を位置決めしており作業に熟練を要していた。そこで前報[1] までに、ピペットを微小振動させることでピペット近傍の液体に局所流動を発生させ、その流れを利用して微小物や細胞を非接触で回転位置決めする方法について報告した。本報では、効率のよい回転条件と、ピペット振動による卵細胞への影響を検証し、小型自走機械とピペット振動を用いた顕微作業方法について報告する。