屈折率傾斜（GRIN）光学素子へのELID 研削加工の試み 第2報：ELID 研削加工の最適条件について

摘要

エレクトロニクス産業の進歩に伴い，電子·光学部品やこれらに関連する金型などでは，より一層の高品位化，高精度化，低コスト化が強く求められている．これらの部品では小型で極微細な形状を有し，特殊材料が利用されることが多くなっている．このようなものつくりでは，製品設計から製造生産までのトータルな統合生産システムの研究開発が必要となっている．これらの背景を踏まえ，現在当研究所において，Volume- CAD(VCAD)システムの開発を進めている．このVCAD システムとは，既存のサーフェースCAD やソリッドCAD とは異なり，ものの内部構造や内部の物理属性がそのまま表現でき，CAD とシミュレーションが完全に一体化することで，専用CAM ソフトの変換により直接加工につながるシステムが実現できる．そのVCAD のもつ表現機能とシミュレーション機能を活用したVolume ファブリケーション手法を応用·検証する目的で，著者らは超精密三次元ナノ加工技術の開発を行ってきている．特に，すでに実証されてきたELID 研削加工技術および超精密切削技術などの要素技術に加え，加工シミュレーション，オンマシン計測やフィードバックシステムの開発により，ナノメートルレベルでの表面精度をもつ三次元加工技術が確立されつつある．ここで，Volume データにより加工対象物の内部構造や内部にある物理属性がそのまま表現できるため，不均質あるいは異種材料のナノメートルレベルの精度における機械加工においても，加工中における各ボクセルの温度，圧力，ひずみなどの状態が表現でき，加工変形シミュレーションなどの評価ができるものと考えている．そこで，このような材料の内部情報を表現できるVCAD システムの特性を活かしたVolume ファブリケーション手法の検証として，不均質材料である屈折率傾斜（GRIN）光学素子に対する超精密三次元加工の実現を目的とした．特に，ここではELID 研削加工法を用いたGRIN レンズへの超精密加工の試みについて，その基礎研究を行ったのでご報告する．