ELID 研削における研削液供給方法に関する研究（第8報：加工に使用した微細ピンの評価 その2）

摘要

近年，微細形状を有する超小型部品の加工技術において，小径ツールを用いた高速回転·高速送り切削による高精度·高品位加工の研究は，目覚ましい進歩を遂げている．また，それらの加工技術に対応した工作機械の開発も急速に発展を遂げている．しかしながら，精密切削や精密研削などの微細加工において，必要不可欠な微細工具（マイクロツール）を入手するのには，概して多大な時間と費用を要する場合が多く，作業効率向上の妨げとなっている．また，現在一般的に入手できるマイクロツールは，微細ドリルで直径0.08mm，刃長0.8mm，微細エンドミルで直径0.1mm，刃長0.2mm，微細ボールエンドミルで先端半径0.05mm（直径0.1mm），刃長0.2mm が最小形状である．これらの寸法以下のマイクロツールでは，微細ピンを加工する際にマイクロツール先端部の破断や曲がり（歪み）が発生したり，仮に微細ピンの形状を更に微細化することができたとしても，加工表面が粗ければ加工による凹凸，すなわちスクラッチ痕を起点として亀裂が発生し破断に至ったりなど，さまざまな理由によりその加工が非常に困難を極めている．また，微細ピンをさらに微細化すれば，加工機上においてその直径，高さおよび表面性状などの測定が非常に難しい．したがって，より寸法精度が高く，より微細なマイクロツールは一般的に入手が非常に困難である．さらに，マイクロ切削などのために使用されるマイクロツールでは，ツールとして用いられた機械加工の際の負荷に十分耐えられる機械的な強度を必要とされている．ここにおいても前述した通り，マイクロツールがより微細化されるほど，表面性状および物質的テクスチャーはマイクロツール自体の機械的特性を低下させ，それを用いた機械加工においては多大な影響を及ぼすことが示唆される．さらに，マイクロツールが微細化すれば，寸法効果により表面性状の影響を受けやすくなり，マイクロツールの寿命にまで影響を与えることになると示唆される．したがってマイクロツールは，ナノメートルレベルまで制御できる非常に平滑な表面性状を必要とされる．さらに，そのマイクロツールを用いた機械加工では，高品質な表面仕上げを達成することが最終目標である．そこで本研究では，「マイクロ·ワーク·ショップ」という概念に基づいて考案した旋回電極式ELID 研削システム1)搭載小型縦型円筒研削加工機を用いて，マイクロツールを製作し，そのマイクロツールを使用した切削加工におけるマイクロツールの表面性状の影響について検討を行った．