小型自走機械群による超精密生産機械システム第90報ピペット振動による卵細胞の非接触回転位置決め

摘要

近年、医療やバイオテクノロジ分野の現場において、微細作業の重要性がますます増大している。品種改良のための受精卵核移植や、不妊治療、クローニング技術など超精密作業は不可欠である。しかし、これらの作業を人間の手によって行うことは困難であり、筆者らのグループでは、マイクロロボットを用いた、細胞操作システム[1] の検討を行っている。卵細胞は極体付近に核と呼ばれるDNA とタンパク質との複合体から成る球状構造物を持っており、この核は細胞の再生と生存に不可欠なものである。顕微受精においては核の損傷を防ぐため、特定の位置に卵細胞を固定し、インジェクションピペットを穿刺しなくてはならない。また核移植においては、核を抜き取りやすい位置に卵細胞を固定する必要がある。従来の装置では、ホールディングピペットやインジェクションピペットを手動で巧みに操作することによって、卵細胞を位置決めしており作業に熟練を要していた。本研究では、ピペットを微小振動させることで、ピペット近傍の液体に局所流動を発生させ、その流れを利用して、微小物や細胞を非接触で回転位置決めすることに成功した。本報では、基礎実験の結果と位置決め作業の性能評価について報告する。