福島の汚染をめぐる状況と今後の対応

摘要

福島第一原子力発電所の事故は、最悪の原子炉事故ではなかったものの、とても悲惨な原子力災害でした。放出された放射性物質による放射線レベルの上昇で、一時は福島県だけで10万人以上の人々が避難を経験し、現在でも住民が帰還できない地域が残ります。原子炉の事故から三ヶ月も経つと、降着した放射性物質から人々が受ける放射線は、ほぼ二種類の放射性セシウムのγ線だけになりました。我が国の火山性の土壌には、セシウムを結晶の隙間に固定する性質があるため、地表に降下した放射性セシウムは、土壌粒子に固着し、地下への浸透も比較的浅い部分に留まり、地表水による移動もあまり多くありませhでした。そのため、weatheringと呼ばれる風雨による放射線レベルの低下は、ほぼ二年間で完結していたことを、航空機モニタリングの結果から確認できます。その後の放射線レベルは、二種類の放射性セシウムの物理半減期に従って推移し、現在では、ほぼセシウム137の半減期で緩やかに低下しています。