多チャンネル計測による視覚性注意課題遂行時に対する事象関連電位の特徴

摘要

ヒトの注意機能に関する研究は古く，脳波が発見されて以来（Hans．Berger，1924），選択的注意に関与するP300の発見など（Sutton，et al.1965）様々なことが明らかにされてきた。しかしながら，注意メカニズムには末だ解明されていない点も多く，多くの研究者が取り組hでいる高次脳機能に関わる研究テーマの一つである。著者らの先行研究では，健常な被験者に対して神経心理学検査の標準注意検査法（CAT）に含まれるPaced auditory serial addition test（PASAT）を実施した。酸化ヘモグロビン濃度変化を近赤外分光装置（NIRS）を用いて測定し，血中グルコース濃度との関連と課題難易度における活動領域の変化を明らかにした。またPASATが聴覚性注意課題として作成された検査のため，視覚性注意課題としてPaced visual serial addition test（PVSAT）を作成し，脳血流変化と事象関連電位の特性把握を試みた。ただこれまでの研究で用いた脳波計は単チャネルでの計測であり，信号発生源の推定やその遷移を把握できなかった。以上の背景から，本報告では先行研究により得られた聴覚性注意ならびに視覚性注意に関する脳活動における知見ともに，脳波の多チャネル計測により信号の発生機序を検討して，注意機能の特性を明らかにすることを目的とする。