マルチエージェント型電力市場モデルに基づく需要家側電力貯蔵装置の導入評価に関する基礎検討

摘要

我が国では電力貯蔵技術の向上とともに、負荷平準化の解決方法として貯蔵装置の導入が考えられている。また、近年の電力自由化の流れの中で貯蔵装置を導入することで市場清算価格(Market Clearing Price: MCP)が安定化することも期待される。一般に電力市場では発電事業者と小売り供給者(Load Service Entity: LSE)が各々の価格と電力量を入札し、そのときの需要曲線と供給曲線との交点が約定価格と約定量になる。著者らは文献において、市場の需要に対して市場価格が確定的に決定されるモデルを用いて、需要家設置の貯蔵装置がLSEに与えるコストメリットについて検討を行った。ただし、実際に市場価格の高騰時に需要が抑制される場合には、発電事業者の入札戦略等にも影響を与えるため、複雑なメカニズムを通じて市場価格が変化する。そこで本稿では、マルチエージェントモデルを用いて市場価格を算出し、需要家設置の貯蔵装置が価格変動に与える影響を検討する。