実車両を用いた危険場面再現手法の研究（第2報）－交差点右折場面における運転操作及び車両挙動の検討

摘要

交通事故の発生件数は平成17年頃より減少傾向にあるものの，平成25年中には約63万件発生しており，死者数においては4千人以上である．これまでに運転中のエラー等の運転者行動を分析し，交通事故が発生した要因を解明することで，交通事故数の削減を目指した研究がなされている．例えばドライブレコーダ等の記録機器を用いて，事故や危険場面に遭遇した際の運転者行動を取得·分析し，その結果をもとにした危険場面再現実験により，事故につながった運転行動を実証的に示した研究がなされている．ここで実際に即した運転行動を取得するためには，現実感のある設定の下に実施されることが望ましい．そこで筆者らは，現実に即した運転行動を取得することを目的として，実際の車両の運転席前方に3台のモニタを搭載し，実風景上に歩行者のコンピュータグラフィクス（以下，CG）を重畳することで交通事故が発生し得る場面を安全に再現可能な実験車”JARI-ARV”を開発した．CGには拡張現実（Augmented Reality，以下AR）を適用しているため，自軍の挙動を反映した車両や歩行者等の他交通参加者を表示することができる．しかしながらJARI-ARVは，運転席前方に搭載したモここタの映像をもとに運転するため，視覚情報の違い等による運転行動や車両挙動の変容が懸念される．そのため前報では，右折時の走行軌跡や，路側の歩行者への対応及び飛び出し歩行者への反応時間等については，通常車両とJARI-ARVにて同等であったことを報告したが，運転操作や車両挙動についての検討は十分になされていない．そこで本報告では，交差点右折時のJARI-ARVの特性把握を目的として，通常車両とJARI-ARV による運転操作及び車両挙動について検討した結果について述べる．