自動車衝突後の歩行者の挙動と路面による傷害の検討

摘要

国内における平成22度の交通事故発生状況において交通事故死者数（4,863人）の中で，歩行者中の死者数は1,714人であり，全体の35.2%を占めている．歩行者事故は子どもと高齢者が遭遇する頻度が高く，高齢者の事故では死亡率が高い．国内では高齢化の進展のため，交通事故死者数のうち歩行中死者の占める割合が年々増加する傾向がみられる，歩行者は事との衝突後，路面に向かって投げ出され，路面と衝突する．歩行者の傷害は，衝突時に車との直接の接触にともなう傷害，車から離れた後の路面との接触による傷害，さらに車による轢過にともなう傷害に分けることができる．これまで一般に，歩行者の傷害は車との衝突によるものが主であり，その発生頻度は歩行者の傷害全体の7割を占めると言われてきた．現在，歩行者保護法規および自動車アセスメントによる歩行者インパクト試験によって，車との接触による傷害のリスクは大幅に減少している．しかし，歩行者の路面との接触による傷害に関する研究はほとhど行われておらず，今後の歩行者保護のさらなる進展のためには，路面との衝突による傷害について検討していく必要がある．本研究では車との衝突後から路面に接触するまでの歩行者の挙動を推定することを目的とし，MADYMOを用いて歩行者の路面接触による傷害を調査した．特に車の衝突速度や車体形状と，頭部の路面との衝突速度の関係を調べ，衝突後の歩行者運動および頭部と路面との衝突速度の定式化を試みた．