車両振動が3Dへッドアップディスプレイにおける奥行き知覚に与える影響およびその低減手法に関する基礎的研究

摘要

近年, 車載用へッドアップディスプレイ(Head-Up Display, HUDと称す)に拡張現実(Augmented Reality, ARと称す)の技術を応用したAR-HUDの研究·開発が進められている.先行研究によれば，前景内の重畳対象の距離に虚像を表示する方式を採用することで，路面に対して垂直かつ固定距離に虚像を表示する従来の方式よりも奥行き知覚を正確に提供可能であることが示されているが，走行中の車両振動に伴う頭部位置の変化がドライバーの奥行き知覚に影響を与える可能性が指摘されている.単眼のHUDを用いた研究では，加速度センサーにて大きな振動を観測した場合に，一時的にHUDの表示を隠すことで，奥行きを正確に知覚可能であることが報告されている.このように，車両振動がドライバーの奥行き知覚に影響を与える可能性は指摘されているが，奥行き知覚に影響を与える車両振動の特徴等への言及はなされていない.そこで本研究では，初めにHUDを使用した実道走行を実施し，奥行き知覚に影響を及ぼす車両振動の特徴を抽出した.その特徴を再現した試験走路において，表示方式が異なるHUD を使用し，表示の補正を行った場合の奥行き知覚を比較することで，車両振動が奥行き知覚に与える影響およびその低減手法の効果を分析·考察した.なお本研究は，慶應義塾大学理工学部·理工学研究科生命倫理委員会の承認を得て実施した.