高度車両制御への適用を目指したタイヤ振動を用いた路面状態判別技術の開発

摘要

近年，IoT(Internet of Things)の概念で，様々なモノにセンサーが取り付けられ，ネットワークを介して情報が収集，蓄積されるようになってきた.その実現にはセンシング技術の発展が大きく寄与しており，本技術領域であるタイヤに関しても，TPMS(Tire Pressure Monitoring System)はすでに商品化されており，空気圧や温度といった準静的な物理量は高い信頼性を持ちつつ安価に取得できるようになってきた. さらにタイヤが唯一路面に接する自動車部品であるという特長を活かし，タイヤにかかる力や路面状態などの動的な物理量を計測する技術の開発が進められている．我々はこれまで，タイヤ振動の特徴が路面状態によって変化することを見出し，その逆問題として，タイヤ振動波形の特徴から路面状態をリアルタイムに判別するシステムを開発してきた．このシステムは，タイヤ振動波形の特徴を，時系列的且つ周波数的に定量化し，路面状態を7 状態に判別するシステムであり，現在冬季道路管理向けに開発が進められている．具体的には凍結防止剤の自動適正散布への適用であり，走行中リアルタイムに路面状態を判別し，その情報を携帯電話回線を介して後続の凍結防止剤散布車に送信するシステムとなっている．このシステムは，道路管理という限られた領域ではあるが，タイヤがセンサーシステムとしてネットワークにつながる，言わばInternet of Tire である．本稿では，上記タイヤ振動を用いた路面状態判別システムを，一般の車両にも搭載できる簡素なシステムで実現するために開発した新たなアルゴリズムを説明するとともに，車両がネットワークにつながり，路面状態情報とGPS による位置情報および時刻情報を統合した情報が多数の車両から大量に得られるようになった将来，その路面状態情報bigdata を用いた情報の更なる高度化手法およびその情報の有用性についても述べる．我々の最終的な目的は，Internet of Things の一部として， Internet of Tire を具現化することにより，情報で安全な交通社会に貢献することである.