サッカーディックイントルージョンに基づく実環境でのドライバ·ディストラクションの評価

摘要

運転者の認知状態を推定することで，ヒューマンエラーに起因する事故を未然に防ぐ可能性がある．筆者らは，運転者の認知状態を推定する生理指標の一つとして，サッカーディック·イントルージョン（サッカード型侵入）と呼ばれる眼球運動に着目し，それを用いて高認知負荷（メンタル·ワークロード）状態の推定手法を提案してきた．通常の眼球運動では固視微動と呼ばれる概ね0.5度以下の振動が見られるが，その中で時折サッカーディック·イントルージョン（SI）と呼ばれる大きな視線逸脱が生じる．SIは特に水平眼球運動に見られ，最大で4度以上の振幅となる．既往研究において，徳田らはメンタル·ワークロード（MML）の上昇に従い眼球のSI運動が優位に増加すること，すなわち，SIの発生回数や大きさによって被験者にかかるMWLを推定可能なことを明らかにした．しかし，SIは頭部を固定した状態で眼球運動を計測しており，実際の自動車運転時に起こり得る視線移動や振動などは考慮されていない．本研究では，自動車技術として応用可能な注意状態の定量評価手法を考案し，ドライバのMWLを定量的に評価することを目的とする．