空気圧縮機から排出される潤滑油粒子の除去に関する研究

摘要

大型トラックは制動力に優れた空気圧式ブレーキを採用している．図1に空気圧式ブレーキ系のシステムを示すこ空気圧縮機からは潤滑油と空気中の水分が粒子となって排出されており，実車ではエアドライヤ内の帯電フィルタを用いて潤滑油粒子の除去を行っている．しかしこのフィルタの除去性能は十分とは言えず，ブレーキ系内部に油分が付着し故障や寿命低下を招くことが懸念されている．そこで筆者らはフィルタ通過前と通過後の粒子個数濃度分布を測定した．その結果，0.01μm～1μmの粒子径をもつ粒子はフィルタを通過してしまう事がわかった（図カ．そこで本研究はフィルタの油分除去性能を向上させること目的とし，過去に筆者らは粒子がフィルタに付着するメカニズムを明らかにするため，フィルタを構成する繊維一本に着目して繊維近傍を通過する粒子の粒子径ごとの挙動の変化を調査した．対象とする粒子の径はnm～μmオーダーと非常に小さく，実験による粒子の追跡は難しいためCFDを用いた解析手法を採用した．図3aに粒子径が5μmの粒子挙動を示す．このように粒子径が0.5μmより大きい粒子は繊維に慣性衝突することで除去できる事がわかった．0.5μm以下の粒子は空気分子が粒子に衝突することで発生するブラウン運動を考慮することで，粒子径が0.05μm以下の粒子も繊維に付着することがわかった．また粒子径が小さくなるほどブラウン運動が粒子挙動を支配するため除去率は向上した．図3bに粒子径が0.001μmの粒子の挙動を示す．ブラウン運動によって除去できていることが分かる．