高度自動運転における権限委譲方法の基礎的検討（第5報）－システム故障に起因したTOR時の制御方法と表示方法の違いによるドライバ対応行動の比較

摘要

乗用車の自動運転においては，SAE (Society of Automotive Engineers)の自動運転レベル定義でのレベル2およびレベル3に関する議論が活発である.当該定義におけるレベル3とは，OEDR (Object and Event Detection and Response)を含む DDT (Dynamic Driving Task)の全てをシステムが担う.しかし，システムの機能限界や故障に伴い，DDTのFallbackがドライバ（Fallback ready User)に求められる.レベル3自動運転のメリットは，ドライバが一時的にDDTから開放されることにより，運転の負担が軽減される点や運転外作業を行うことも可能になる点が挙げられる.一方で，ドライバの覚醒度低下や運転外作業への集中は，権限委譲が必要になった際に車両から提示される TOR (Take Over Request: Request to Intervene と同義）へのドライバの対応行動に影響することが懸念され，TORに必要な余裕時間の議論に及hでいる.本研究では，TOR方法に資する知見の収集を目的としてDS 実験を実施し，システムの故障に起因した余裕時間4秒のTORに対して，運転外作業画面へのTOR表示の効果を調べた.また，正常時とTOR時とのシステム制御方法を変えることで，システムの異常に気づきやすくなることや，物理的な衝突リスクが低減することが期待される.そこで，TOR中の車両制御方法として，横方向および縦方向の4秒間の制御力を維持する場合と抑制する場合とで，ドライバの対応行動や車両挙動を比較した.