脳卒中後遺症患者の自動車運転再開に向けた取り組み－患者調査と自動車運転シミュレーターを用いた検討

摘要

脳卒中患者の社会復帰を促す上で，自動車運転に関する情報提供，訓練指導が必要であることがわかった．脳卒中患者が自動車運転再開を希望する場合には，片麻痩患者が利用できるように改造された自動車運転シミュレーターを訓練に用いることが有効と考えられた．また，訓練を繰り返すことで，一定の効果が現れた。今回は，直線やカープを走行する，危険を認知して急制動をかける，といった基本的運転課題のみを行った．今後は，市街地走行のような，より複雑な課題における訓練効果についても検証していきたい．自動車の運転に関わる認知能力は，単に運転技術のみではなく，運転ルートを選択し，交通ルールを遵守する能力や，他の車や運転者を考慮した行動選択などのさらに高次な認知機能が必要であると言われている．したがって，このような訓練成果をもとにした，実車演習を行うことが重要であろう．本研究は，脳卒中患者の一部が交通社会に復帰できにくい状況を解決し，かつ安全かつ快適に自動車を運転できるような支援の一つとして行った．