太陽熱集熱機能を追加した建材型太陽光発電システムの熱用途拡大に関する取組み

摘要

CO_2 排出削減による地球温暖化防止に加え、ピーク電力負荷削減による電力系統の安定化を目的して、太陽光発電（PV）の普及が加速している。特に2011 年3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原発問題を端緒としたメガソーラー開発の取り組みは、全量買取制度の導入に後押しされる形で急速に拡大する勢いである。住宅用の太陽光発電に関しても、システム導入に対する国の補助金と10 年間の固定価格買取制度の相乗効果で、平成23 年度はJ-PEC（太陽光発電普及拡大センター）の補助に対して301,428 件の申請があった。1 件平均4kW とすれば120 万kW の発電容量になる。一方、メガソーラーは1か所当たりの発電容量は大きいが、設置場所が限られ、資源エネルギー庁の24 年度導入見込みは50 万kW となっている。メガソーラーは広大な敷地を必要とし、一般には沿岸部や山間部、工場跡地、耕作放棄地などが有力な候補地となっており、必ずしも電力を必要としている地域に近くない上、太陽熱利用を合わせて検討しても熱搬送が容易ではない。エネルギーの地産地消という観点からも太陽熱利用を兼ねた住宅用太陽光発電の意義は高い。太陽光発電モジュールの発電効率はセルの仕様にも依るが10%程度であり、入射した太陽エネルギーの90%前後は熱となってモジュールや周辺環境の温度を上昇させ、やがて散逸する。結晶系PV の発電効率は温度依存性があり、熱が有効に利用されていないだけでなく、システムの効率低下や部材の劣化を早める要因にもなっている。一方で住宅のエネルギー負荷には暖房、冷房、給湯、調理など熱的負荷が占める割合が高く、家電機器や照明など純粋に電力を必要とする用途負荷の割合は50%程度である。このようなことから、太陽のエネルギーを電気に変換するだけでなく、これまで十分に利用できていなかった熱利用を進めれば、住宅分野の省エネは改善の余地が高いと考えられる。