腰痛に関係する固有受容器の機能低下のみえる化技術：重心動揺試験に基づく評価法

摘要

近年，超高齢社会における腰痛が社会的な問題となっている[1].これらの原因として固有感覚の低下が考えられている[2].固有感覚は姿勢制御を行うために用いられるが，高齢者や腰痛疾患患者は固有感覚の低下に伴う姿勢制御能力の低下が指摘されている[3].本研究の最終目的は，腰痛解消のための固有受容器トレーニングデバイスおよび検査デバイスの開発である.医学系の先行研究では，固有受容器と機械的振動刺激との関係が指摘されている[4].固有受容器とは固有感覚を司る受容器であり，固有受容器にはいくつかの種類と，それに応じた応答周波数を持つ.本稿で注目する固有受容器と応答周波数は，マイスナー小体の30～40Hz，筋紡錘の60～140Hz，パチニ小体の100～300Hzである.筆者らはこれまでに，振動デバイスを作成し，高齢腰痛者（以降，腰痛者）は個人個人で機能低下している固有受容器および振動周波数（以降，障害周波数）が異なる可能性を報告した.そこで，個人の固有受容器の機能低下を評価するプロトコルを策定するために，腰痛者の固有受容器の機能低下を定量的に評価可能な指標（以降，評価指標）を決定する必要がある.本稿では，腰痛者と非腰痛高齢者（以降，非腰痛者）各3名の重心動揺の比較から，評価指標の策定を行う.