気象条件を考慮した電線温度制約下における送電ネットワークの動的最適運用に関する基礎検討

摘要

太陽光発電や風力発電といった出力変動型再生可能エネルギーの大量導入された電力システムを安定かつ経済的に運用するためには，系統全体の需給バランス維持や送電線の容量制約を維持しつつ，出力調整可能な火力発電機を経済的に運用することが重要である。ここで，広域（例えば電力会社規模）の需給バランス問題については，太陽光や風力発電の出力変動のならし効果により相対的な出力変動幅は小さくなるものの，比較的狭いエリア（都市程度の規模）では，ならし効果が小さいため急峻かつ比較的大きな変動が生じることが懸念される。そのような場合には，送電線に予期せぬ過大な電流が流れる可能性があり，線路過負荷の発生するリスクを適切に管理する必要がある。本稿では，再生可能エネルギーの大量導入に伴う送電線の過負荷問題に対して，電線温度に基づく送電容量を評価することにより，線路過負荷リスク評価のための基礎的検討を行う。特に，常時許容電流を決める際に用いる安全サイドの気象条件だけでなく，風速をパラメータとして変化させることにより，電線温度制約下における送電ネットワークの動的運用の可能性について検討する。