離散化双線形モデルに基づくブーストコンバータの非線形制御則とその最適性について

摘要

ブーストコンバータ[1-3] は直流電圧を昇圧できるパワーエレクトロニクス機器の一種であり，その構成が簡単であることから様々な電気製品で利用されている．ブーストコンバータのモデル化手法としては，状態の近似的な平均化によりスイッチング動作の影響を記述する平均値モデルがしばしば用いられている[1, 3, 4]．文献[5] では，平均値モデルに代わるブーストコンバータのモデル化手法として，スイッチング動作を直接かつ厳密に扱うことにより得られる離散化モデルが提案されており，制御則の導出にあたってはこのモデルを離散化双線形モデルによって近似することが妥当であるということが述べられている．それに加えて，離散化双線形モデルに対する同定法が提案されており，作成したコンバータの同定実験を通して離散化双線形モデルとその同定法の有効性が確認されている．文献[6] では，離散化双線形モデルに基づき非線形制御則が導出され，出力電圧制御実験を通してその妥当性と有効性の検証が行われている．本論文では，文献[6] で述べられている制御則の設計法に最適性を考慮した考え方を組み込むことにより制御性能を向上させることを考える．ただし，この方法で設計された制御則のもとでは閉ループ系の大域的な安定性が必ずしも保証されてはいないため，閉ループ系の安定性を検証する方法についても述べる．最後に，シミュレーションと実験を通して本論文で提案している制御則の設計法の有効性を検証する．