グラディエント·フローを用いた正四面体の展開図作成法の検討

摘要

日本の優れた折り紙作家達によって創作された様々な形状の美しい折り紙は，日本の伝統的な手工芸として広く世界に知られることとなり，英語でも"ORIGAMI"と呼ばれている[1].今日では折り紙を応用した研究[1,2,3] も数多く行われており，理論的な研究としても，折り紙の折る操作に着目し，作図問題や方程式の求解[4]，折り紙を量子計算のアルゴリズムに応用[5]した研究も存在する.また，純粋な折り紙の研究として，どのように展開図をつくるか，どのように折るかなどを数学的に扱う枠組みも存在する.本稿では，その中で立体の展開図について着目する.紙が与えられたときに，それを折るという行為は，三次元空間に埋め込まれた二次元平面のある領域を考え，その二次元閉領域を三次元空間で変形することである.このとき，所望の形に変形するためには，適切に折り目を決め，正しい順序でその閉領域を変形していかなければならない.この領域内に折り目をつけたものを本稿では「展開図」と呼ぶことにする.展開図が完成すれば，後はその折り目をどのような角度で折るのかを定めることによって，完成する立体は1通りに定まる.しかし，これは折り目が与えられればできることであり，どのように折り目をつければよいかも考えるべき問題である(例えば，1つの領域が与えられても，異なる折り目を付けることで異なる立体が得られる[6]).今日までの展開図の研究としては，先人たちが見つけた折り目についての数学的妥当性（折る角度などの整合性）や，コンピュータ·シミュレーションを用いてどのような折り目を作るべきかを探す研究が多く，どのような根拠に基づいて展開図を作成すればよいかの言及はされてこなかった.よく知られている図形が，何を理由に折り目をつけられているかが分かれば，その図形の性質をよく知ることのみでなく，今まで知られてこなかった折り目を作ることで様々な工学的応用の可能性も期待できる.そこで，本稿では折り目の自動生成という問題を最適化問題として考える.