混流生産ラインに対する最適工程設計法の提案－生産性に対する多目的問題の解法

摘要

近年の顧客ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短命化により，多くの製造現場では多品種少量生産や変品種変量生産が導入されている．多品種少量や変品種変量生産に対しては混流生産ラインが利用される場合が多く，作業者が都度判断して作業を行うことやロットを利用した平準化により生産が行われている．このとき，作業者の作業は多工程持ちや多能工化が進められ，作業者の負荷も大きく，作業者の作業状況が生産性に及ぼす影響が従来に比べて大きい．とくに低コスト化にするためには少人数での作業者による生産性向上を目的とする作業現場の構築が必要となる．一般に，生産ラインの生産性を向上させるためにはラインバランシングとして，ラインを構成する工程の作業時間をほぼ同一とすることで，サイクルタイムを小さくするとともに作業者の手待ち時間を削減することで行われる．しかしながら，少数の作業者により作業の多工程持ちが促進すれば，作業時間のバラツキによる手持ち時間が増加し，生産性が減少することが考えられる．一方で，混流生産では異種製品が同一ラインを流れるため，各工程で割り付けた要素作業に製品間の作業時間差や製品ごとに工程間の作業時間差が大きければ，手持ち作業が大きくなるため生産性が減少する．上記の特徴を考慮して，本研究では混流生産における工程設計の問題点を説明する．その後，混流生産において生産性を高めるための多目的関数に対する工程設計法を提案する．提案する工程設計法は，前処理にクラスタリング法を利用し，要素作業の組み合わせを行い，多目的遺伝的アルゴリズムにより，工程設計案を作成する方法である．そして，単純モデルによる数値実験により提案法の有効性を示す．