視覚刺激と運動意図が事象関連脱同期に及ぼす影響

摘要

社会の急速な高齢化に伴い，近年，脳卒中をはじめとする脳血管疾患の患者数が増加している．現在，国内の患者数は280万人といわれ，毎年25万人以上が新たに発症していると推測されている．医療の発達によって，脳卒中で直接死に至る事例は減りつつあるが，患者の多くは発症後に身体の片側にマヒが残るなどの後遺症に苦しhでいる．どの程度のマヒが生じるかについては，損傷した脳部位やその程度によって－異なるが，多くの場合，患者やその家族の日常生活に大き·な影響を及ぼすことから，リハビリテーションによって運動機能を回復させ，社会復帰を果たせるように支援することが求められている．このような背景から，リハビリテーションの現場では様々なリハビリ技法が試みられている．特に近年では，脳神経科学の目覚ましい進展にともない，運動機能回復リハビリテーションを「新しい身体を用いて新たな動作を習得する運動学習の過程」ととらえることの重要性が指摘されている．ここで運動学習とは，我々が新たな身体動作を獲得する際，その動作を反復して行うことによって脳の神経回路綱を可塑的に変更し，次第に運動を精細化していく過程を指す．