臨床工学技士養成教育におけるロボット製作実習

摘要

著者の所属する医療福祉工学部医療福祉工学科は医療系国家資格である臨床工学技士を目指す学科である．臨床工学技士は病院で活躍する職種であり，医師の指示の下、生命維持管理装置の操作，および，保守点検をおこなっている．近年，医療機器の高度化が進み，医師·看護師の知識だけでは医療機器の安全な運用·管理が難しくなってきた．そのような背景から病院内に医療機器のスペシャリストが必要とされ，1988年に新たに誕生した医療職種が臨床工学技士である．臨床工学技士のおこなう仕事である機器管理では，医療機器のオーバーホールをして内部の部品交換をおこなうこともあるが，病院内の臨床工学技士では対処できない場合，医療機器メーカに修理を依頼するケースもある．オーバーホールをおこなう場合，ドライバの使い方や電気コネクタの接続などの基本的なスキルが必要となる．また，修理依頼の際には機器の原理や構成を把握したうえで，メーカに状況説明することや依頼書を作成することでメーカ側のエンジニアとしても迅速な対応が可能となる．そのため，医療機器の運用·管理をおこなうためには医療の知識のみならず，工学の知識も必要となるため，本学科でも機械工学，電気工学，情報工学といった，工学系科目の単位も取得するカリキュラムとなっている．しかし，講義形式の授業では理論を学ぶことが精一杯であり，せっかく学hだ知識を活用する力，すなわち，ものづくりのスキルを得ることは難しい．そこで，本学科ではものづくりを体験し，その素養を身につけた臨床工学技士養成のため，ロボット製作実習をおこなっている．本実習は3年次通年に配当され，過3コマ（90分×3）を30過にわたっておこなう実習である．学生は3～4人で1グループを作り，1体のロボットを完成させる．前期15過では機械加工·機械設計，電気回路製作を中心におこない，後期15過では制御プログラム製作を中心におこなっている．ロボット製作実習では，機械·電気·制御とものづくりの一連の工程を体験する構成になっているが，本報告では，機械加工·機械設計に関する実習内容について紹介する．