同一身体上の複数動作認識に向けたトピックモデルに基づく動作と部位着目の仮説相互推定

摘要

道具を使ったり，作業をしたりなどの日常生活行動では，各身体部位の独立した動作によって成立することも多い．また身体部位ごとに動作の目的や意味が異なる動作が同時に複数発生することが頻繁に起こる．例えば，歩きながら電話をするという動作は，歩く，電話をするという二つの動作が実行されているとすると，電話を握った手や頭の近くで持つという腕の動きを見ることで，電話をするという動作を認識できる．一方で，脚部を注目するとその人の動作は歩くということが実行されていることが認識できる．しかしながら，全身動作を対象とした手法を用いると，同一身体上で実施される複数の動作を認識することは難しい．この問題に対して，身体における各関節情報に重みづけを行うことで，単一動作の認識率を向上させる研究が行われている[1][2]．一方で，上記のような二つの動作が同時に起こるような複合動作に対して認識を行う場合，いずれかの動作しか認識できなくなるか，まったく違った認識結果が表れてしまうことが懸念される．Weiらは身体の局所部分の動作認識手法と2つの動作の前後関係を使って，同一身体上で実施される複数動作の認識を実現している［3］．この手法では動作ラベル間の時間的前後関係性を用いているが，上記の例のように多くの複合動作は2つの動作の目的や意味が異なっており，関連性が弱い場合がある．ここでは，認識すべき最小の動作の単位を単位動作と呼び，同じ目的や意味を持つ単位動作が複数時系列に並び一連の流れを構成する上位の概念を動作トピックと呼ぶ．同一身体上で実施される複合動作は，上位の動作トピックを考慮し身体部位の局所的な単位動作の認識を実行するべきである．小椋らは，動作トピックをトップダウン的に下位の単位動作認識に情報を与え身体動作の認識を行っている[4][5]．これらの手法では，自然言語処理において用いられるトピックモデルを応用することで，動作トピックを考慮した認識を実現している．しかしながらこれらの手法は，動作トピックの推定は行っておらず同一身体上で実施される複合動作の認識へ踏み込hでいない．そこで本研究では，同一身体上で実施される複合動作の認識を目指し，身体部分着目に基づいた単位動作の認識と動作トピックの相互推定手法の確立を目的とする．