ハードウェア統合型エンジンシミュレータの開発－リアルタイム制御環境の構築と動作実験

摘要

近年，自動車を走行させるための様々な技術が高度化，複雑化している．中でもエンジンは，環境に配慮して，低燃費化や排気ガスのクリーン化などが要求されている．エンジンの実開発においては，実験で適合させるパラメータが膨大となり，開発コストが問題となっている．物理モデルだけではモデル化が難しいシステムであるが，特性のばらつきや経年変化に対しても設計性能が確保できる制御手法が望まれている．エンジン制御に関する研究は盛hに行われており，モデルベースでの制御手法[1, 2, 3]や，多入力多出力非線形系として扱った研究[4] もある．一方で，制御手法の検証にあたり最終的には実機での検証が必要となるが，研究室レベルにおいては実際のハードウェアを用いることは難しく，実機環境を再現するシミュレータが有用である．本研究では，検証用実験環境として，ハードウェアとソフトウェアを融合した統合エンジンシミュレータ環境を開発する．提案するエンジンシミュレータはピストンクランク機構の機械系は実際の部品を用い，エンジン内の吸気·圧縮·燃焼·排気のダイナミクスはコンピュータ上で実装するものである．本論文ではエンジンシミュレータの試作機を構築し，動作結果を示す．