遠隔操作型堆砂除去装置を応用した放射性底泥除去技術

摘要

近年，水力発電用ダムの調整池や貯水池の一部では，当初設計を上回る速度で堆砂が進み，貯水量の低下を引き起こしている．それに伴い，将来的な発電量の減少が懸念されている．東亜建設工業は水力発電ダムを数多く抱える東京電力株式会社と共同で，小型で運搬が容易で，なおかつ遠隔操作が可能な堆砂除去装置「マジックボール」を開発し，2008 年10月より長野県大町市の高瀬川第五発電所調整池の堆砂除去システムとして導入した．その後，2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により，放射性物質を含有する土砂が各地の水域に堆積し，その除去が復旧·復興作業の課題の一つとなっている．水域での放射能汚染については，対応方針や除去基準が明確に策定されておらず，現状ではほとhど未着手となっているが，陸域の汚染物質は降雨などにより，やがては水域に移行し，最終的には水域の底泥に集積される．水域が農業用ため池であれば耕作地の再汚染に，漁場（湖や海域）であれば採餌を通じて魚類の汚染につながることが懸念される．このような汚染の拡散を防止するためには，水域に集積した汚染底泥を除去することが最も効果的と考え，上記の堆砂除去システムを応用した放射性底泥除去システムを考案·開発し，福島県内のため池で実証実験を行った．本稿では堆砂除去システムとその施工管理システムの概要について紹介するとともに，放射性底泥に向けた改造と，福島県内で行った放射性底泥除去の試験施工について概説する．