レーザー治療における皮膚内部のふく射伝熱解析

摘要

皮膚のシミ，いわゆる色素沈着を対象としたレーザー治療は，近年，急速に普及が進hでいる．その一方で，期待したような治療成果が得られないだけでなく，症状を悪化させるケースも少なくない．医師は，レーザーの波長や照射時間（パルス幅），出力といったレーザーの照射条件を変えることで，シミを除去するのに適した条件を探りながら治療を行っている．しかしながら，治療に適したレーザーの照射条件は，患者の色素沈着の症状の種類や度合い，元々の皮膚の個人差などに依存するため患者個々に異なる．現状，治療を行う医師の経験に基づいてレーザー治療が行われているため，治療成果には大きな差が生じている．この現状を生hでしまっている原因として，レーザーを皮膚に照射した時に皮膚の内部組織でどの程度レーザーが吸収され，また皮膚の内部組織がどの程度発熱するのかなど，レーザーの照射条件と皮膚内部でのふく射伝熱現象との関係性を明確に把握できておらず，治療のメカニズムが不明な点が多いことが挙げられる．したがって，色素沈着の症状の種類や度合いを考慮に入れた，レーザー治療時の皮膚内部でのふく射伝熱現象を把握することと，患者にとって適切なレーザー照射条件を設定する手法の確立が望まれている．