高プラントル数のスカラーが形成する密度成層流体中の減衰乱流

摘要

密度成層流体における減衰乱流のプラントル数依存性を直接数値計算により調べた．一般に，時刻が経過し,乱れが減衰するのに伴い，浮力の影響は次第に小スケールへと及ぶ．浮力の効果が大スケールに限定されている減衰初期では，高プラントル数(Pr=70)のスカラーは,fig．1(a)に示すようにほぼ等方的に分布する．また，そのパワースぺクトルは，速度場の最小スケールに対応するコルモゴロフ波数よりも高波数領域において，波数の-1乗に比例する．これはパッシブスカラーに対するBatchelorの理論に一致する結果であり，浮力の影響がコルモゴロフ·スケール程度の小スケールにまで及ばないとき，浮力を生むアクティブスカラーは浮力を生まないパッシブスカラーと同様に振る舞うことを意味する．一方,浮力の効果がコルモゴロフ·スケールにまで及ぶと，小スケールの流れは鉛直せh断水平流によって支配される．このとき，小スケールのスカラー場には，鉛直方向にのみ微細な構造が形成される(fig.1b)．そのような構造の形成機構は，コルモゴロフ·スケールにおける鉛直せh断水平流を仮定した上での，スカラーの拡散移流方程式の理論解から説明できる．