超小型衛星の熱設計と熱制御：J-SSODから放出される超小型衛星の熱設計

摘要

超小型衛星を宇宙に放出する機会として，H-IIA ロケットの余剰打ち上げ能力を利用したピギーバック方式だけでなく，国際宇宙ステーション(ISS)日本モジュール(JEM)の小型衛星放出機構(J-SSOD)から放出される方式が提供されるようになった.超小型衛星は，中·大型衛星と比ベて熱容量が小さいため，軌道上で，構造や搭載機器の温度が大きく変動する.さらに，多くの超小型衛星は，太陽電池パネルを持たず，太陽電池を衛星本体表面に搭載するため，許容温度範囲の狭い機器の温度を全て能動的に制御するための十分な電力を持たない.このような制約により，多くの超小型衛星では受動的熱制御が最も実現可能な方法になる.受動的熱制御では，構造と搭載機器表面の太陽光吸収率や赤外線放射率を選択したり，構造間，搭載機器と構造間に材料を入れて熱コンダクタンスを調整したり，特定の部分に多層断熱材を適用したりすることで，適切な熱設計が実現される.著者らはこれまで，超小型衛星の熱設計手順に注目し，搭載機器の温度を設計温度範囲内に保つための2つの単純な熱設計コンセプトを提案し，その熱設計コンセプトを，ピギーバック方式で打ち上げられた超小型衛星ほどよし1号機に適用し，軌道上実証を行ってきた. J-SSODから放出される超小型衛星の特徴は，形状が立方体ではなく直方体であること，また，多くの超小型衛星が投入される太陽同期軌道とは異なり，太陽角は毎日変化する軌道であることである.図1は，2015年1月から7月までのISSの太陽角の変化を表す.本研究では，J-SSOD から放出される超小型衛星の熱設計を行った.本研究と拙著により，日本における超小型衛星の放出手段を利用した50kg級の超小型衛星の熱設計の特徴を知ることができると考えている.