ソーレー強制レイリー散乱法によるコロイド分散系の拡散係数測定に関する研究－有機薄膜太陽電池材料PEDOT分散系への適用

摘要

現在普及している無機系太陽電池と比較して，生産コストが低い有機薄膜太陽電池が注目されている.有機薄膜太陽電池の生産コストの低さは溶液キャスト法と呼ばれる成膜方法に由来する.溶液キャスト法では，基板上に材料が溶解した溶液を塗布し，乾燥させることで目的のフィルムを得る.この乾燥過程で基板近傍と液面近傍で溶媒の蒸発による濃度勾配が生じる.この濃度勾配を駆動力とした物質拡散が支配的にフィルムの構造を左右し，この構造によって発電効率は変化する.溶液キャスト法を用いる場合，設計段階における成膜条件の最適化には物質輸送現象を定量的に評価できる相互拡散係数D_(12)が重要となる.そこで，有機薄膜太陽電池材料で広く用いられている導電性ポリマーPEDOT:PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly(styrenesulfonate))に着目した.本研究では，著者らの研究室で開発してソーレー強制レイリー散乱法(Soret forced Rayleigh scattering法:SFRS 法)と呼ばれる光学的な相互拡散係数測定法を用いた. SFRS法によるPEDOT:PSS分散系のようなコロイドが水中に分散する系の測定に適した実験条件を検討するため，1.1wt%のPEDOT:PSS分散系の吸収係数と粒径を測定した.この結果を受けてSFRS法による測定結果について報告する.