炭化水素系混合ガスと大分子ゲスト物質からのクラスレート水和物生成気相組成測定に基づく水和物生成挙動の検討（続報）

摘要

現在，わが国では天然ガスを主に液化天然ガス（LNG）または圧縮天然ガス（CNG）の形で輸送·貯蔵している．しかし近年そのような輸送·貯蔵媒体としてクラスレート水和物の利用が提案されている．その実現には天然ガスからの水和物生成挙動の解明が必要となる．特に，天然ガスを構成する各成分の水和物への選択的取込みに伴う水和物生成器内の気相組成の変化は，器内の相平衡条件と生成する水和物の構造に影響を及ぼすため，その把握は極めて重要である．本研究に先立ちKobayashiらは，天然ガスを模擬した混合ガスと油性の大分子ゲスト物質（その分子が構造H 水和物の大ケージに包摂される物質，本報告ではLMGSと呼ぶ）が共存した状態で水和物を生成させ，その際の水和物生成器内の気相組成の経時変化の連続測定を試みた．その結果，LMGS共存下での水和物生成機構に関する理解を得た．しかし実験開始から約3時間程度（器内の初期ガス量の約0.8倍のガスが消費された時点）で生成器を含む水の循環ループ内に閉塞を生じ，長時間に亘る気相組成変化挙動の把握には至らなかった．そこで本研究では，水循環ループの閉塞を回避し得るよう実験装置を改造し，器内の気相組成が定常状態に向けて漸近していく過程について十分な知見を得ることを意図した．