化粧品がもたらす快感情による肌質感の向上における肌内部変化

摘要

「恋をするとキレイになる」「ストレスにより肌荒れが起こる」「肌は心の鏡」などと言われていることから、肌と心の関係性は共通認識であると考えられるが、心の変化が肌状態にどのような影響を及ぼすのかについては不明な点が多い。スキンケア化粧品には、配合成分や処方技術により肌を良好な状態に保つ機能的価値だけではなく、購入時や使用時に幸福感や満足感といった快感情を喚起させる感性的価値がある。これまでに我々は、スキンケア化粧品の感性的価値に着目し、化粧行為や製剤感触がもたらす快感情が肌状態に及ぼす影響を検証してきた。その結果、顔肌を手のひらで包み込むように押さえる化粧行為であるハンドプレスの実施により快感情が喚起され、喚起された快感情の程度に応じて客観的な素肌の見た目状態（以下、肌質感）が向上することが明らかとなった。さらには、心地よい使用感に設計したクリームの使用によっても快感情の喚起や肌質感の向上が生じることを見出し、化粧行為ならびにスキンケア製剤がもたらす心の変化が肌状態に及ぼす影響を明らかにしつつある。しかしながら、快感情によってもたらされる肌質感の向上が、具体的にどのような生物学的変化によって生じるのかは明らかではなかった。そこで、肌内部の網羅的な遺伝子発現情報を非侵襲的に取得できる皮脂中mRNA解析技術を用いて、心地よい使用感のクリームがもたらす感情の変化と、肌質感ならびに肌内部の遺伝子発現変化との関連性を検討した。