短パルスレーザー誘起フォトメカニカル波を用いた悪性腫瘍に対する光線力学治療効果の向上

摘要

【目的】悪性腫瘍に対する光線力学治療（Photodynamic therapy, PDT）は，血中投与した光感受性薬剤を腫瘍に集積させ，その薬剤分子を光励起することで生成される一重項酸素の殺細胞効果を利用する治療法である．そのため，治療効果を得るには薬剤が血管壁を透過して腫瘍へ輸送される必要があるが，その効率は必ずしも高くない．この課題を解決するために，我々は光吸収体に高エネルギー短パルスレーザーを照射することで誘起されるフォトメカニカル波（Photomechanical wave, PMW）に着目した．先行研究において，PMWに血管壁透過性亢進作用があることが明らかになり（Sato et al., J. Control. Release, 2014），それに基づいて光感受性薬剤（Talaporfin sodium, TS）を血中投与したマウスの皮下腫瘍にPMWを適用した結果，腫瘍へのTSの輸送量が増大し，PDTによる抗腫瘍効果が有意に改善された．本研究では，その効果の詳細を明らかにするため，悪性腫瘍に対するPDTの主要な作用機序とされる殺腫瘍細胞効果と血管内皮細胞障害（血管遮断）について，それぞれ組織学的観察と血流イメージングにより評価を行った．