低速船舶操縦運動モデルのシステム同定手法（第二報：ブラックボックスアプローチ）

摘要

現在、船員不足や海難事故の対策として、船舶の自動自律運行化への動きが大変盛hである。その中でも自動離着桟は最も大きな課題の一つであり、著者らの研究グループは制御理論の観点から、この課題に取り組hできた。さて、古典制御の枠組みを超えた、モデルベースの制御則を使用する場合、一般に数式で記述された運動モデルが必要になる。流体力学的知見を背景に表現された操縦運動に関する運動方程式として、日本ではMMG モデルが使用されることが多い。MMG モデルは、船体、舵、プロペラ等をそれぞれの単独性能と干渉具合を水槽試験により係数を求めることで、運動方程式を表現することができる数式モデルである。しかし、低速操船時の船体周りの流体現象は複雑であるため多くの係数を求めることは難しい。そこで、著者らはSystem Identificationの枠組みからMMG モデルによるパラメータ同定を行う、ホワイトボックス的アプローチによって操縦運動方程式の推定を行ってきた3), 4), 5)。しかし、予め用意したモデルが現実を表すだけの表現力を保持しているのかについて疑問が残り、高精度な推定を行えない場合もあると考えられる。そこで、より汎用性の高い運動モデルを使用する必要があるのではないかと考え、著者らの研究グループはNeural Network(以下、NN と呼称)を使用した機械学習1)と、遺伝的プログラミングを使用したEquation Discovery7)によるブラックボックス的アプローチに関する基礎的研究を行っている。