大型スクリーン上の音像定位に及ぼす映像情報の影響に関する異なる音環境における調査

摘要

テレビ映像などを想定した映像と音像の定位に関する実験結果は多数報告されているのに対し，本稿では，等身大ディスプレイ等のマルチメディア機器を利用した遠隔コラボレーション環境を想定した条件下における，スクリーン（等身大ディスプレイに相当）上の音像の定位に及ぼす映像の影響を明らかにした．受聴実験は，防音室と（残響時間等の意味で）実生活環境の1 つである会議室とにおいて実施し，発話者映像の有無によって受聴者が知覚する発話音声の音像位置がその発話者映像位置に偏る傾向があることを明らかにした．この傾向は，残響時間が異なるいずれの実験環境においても共通して観察された．また，水平方向と垂直方向のいずれの実験においても，提示する音像の位置がスクリーンに投影した発話者映像位置に近いほど，この傾向は強く現れることも明らかとなった．一方，垂直方向の音像定位においては，投影された発話者位置と遠く離れた位置に音像が提示されても，水平方向の音像定位と比較してこの傾向が比較的強く現れることが示された．これは，水平方向よりも垂直方向の音像定位を苦手とするヒトの聴覚特性が1 つの原因であるものと考えられる．こうした原因の分析等について，より詳細な調査が必要であると考えている．