LiTaO_3/水晶構造における縦型リーキーSAWの共振特性

摘要

近年，スマートフォンやタブレット端末等の移動通信システムの急速な発展に伴い，弾性表面波（Surface Acoustic Wave: SAW)を利用したデバイスの高性能化が要求されている.主な要求として，高周波化，広帯域化，温度特性の高安定化，急峻な周波数特性が挙げられ，これらを満たすことのできる伝搬モード，基板構造，圧電材料の研究が国内外で広く行われている.従来のSAWフィルタに用いられる伝搬モードにはレイリー型弾性表面波（Rayleigh-type SAW: R-SAW)や漏洩弾性表面波（Leaky SAW: LSAW)等があるが，最近では，高周波化に対応するためにLSAWよりも1.5～2倍の位相速度を有する縦型漏洩弾性表面波(Longitudinal LSAW: LLSAW)が注目されている.しかし，LLSAWは表面に平行な横波(Shear Horizontal: SH)と垂直な横波(Shear Vertical: SV)の2種類のバルク波を基板内部に放射しながら伝搬し，非常に大きな伝搬減衰を有するためにフィルタにおける急峻な遮断域に必要なQ値を得ることができない問題点がある.この問題点の解決に向けて，異種材料を組み合わせることにより，LLSAWの粒子変位を表面付近に集中させる構造が提案，検討されている.著者らは，1波長以内の厚みを持つLiNbO_3 (LN) やLiTaO_3 (LT)の圧電薄板を，高音速なATカット45°X伝搬水晶(AT45°X-Q)基板に直接接合させると，単体基板と比較して2～3倍の電気機械結合係数(K~2)を有するLLSAWが得られることを理論的，実験的に明らかにした.さらに，支持基板にXカット水晶を用いると高Q値化に重要な伝搬減衰が格段に低減することを示した.