モデル予測制御に基づいた誘導電動機の高速応答とインバータ制御の一検討

摘要

近年，現存する電動機駆動システムの低損失化やさらなる高効率化を目的として様々なアプローチで研究が進められている。本稿では直接トルク制御(DTC)などの電動機駆動時のインバータのスイッチングパターンを直接選択する制御方法に着目し，電動機駆動システムの高速なトルク応答と低損失化の実現を目指す。DTCとは電動機の現在のトルクと一次鎖交磁束が設定した許容範囲となるように事前に用意したスイッチングテーブルを用いて，インバータのスイッチングパターンを直接決定して制御するものである。DTCの特徴は，制御系として電流制御器を用いないことやパルス幅変調，空間べクトル変調といった変調技術を使用しないことであるため，利点として高速なトルク応答と実装が容易なことが挙げられる。DTCのさらなる性能向上のために，あらゆる駆動条件を想定したスイッチングテーブルやトルクリプルとインバータのスイッチング周波数の両方を低減するためのスイッチングテーブルが検討されている。しかしながら，あらゆる駆動条件を想定した場合にスイッチングテールの複雑化や考慮していない駆動条件において制御性能が劣化する問題がある。