植生の分布する広大な高水敷を有する荒川中流部における洪水流の解析精度向上に必要な地盤高と 高水敷上の氾濫機構の評価方法に関する研究

摘要

荒川は埼玉県と東京都を貫流し，流域内には多大な人口・資産が集積している．大規模洪水氾濫時には，人命や資産への甚大な被害にとどまらず，自然排水が困難なゼロメートル地帯に氾濫がおよび浸水が長期化することによる市民生活や社会経済への影響が懸念される．荒川水系河川整備計画1)では，寄居(94.7km)における整備計画流量は6,500 m3/s，岩淵(21.1km)は6,200 m3/sとされており，この区間の中流部において洪水調節を行うことが見込まれている．荒川中流部の広大な高水敷には荒川第一調節池や横堤などがあるが，より効果的にピーク流量を低減させるために，第二，第三，第四の調節池群を整備することが計画されている．最大幅2.5kmにも達する高水敷に横堤群が設置された特別な河道区間において，河道が有する洪水調節機能を正しく把握することは，調節池群の効果的な整備を考える上で重要である．我が国では，荒川中流部のように高水敷が低水路幅に比して著しく広く，様々な植生が繁茂し，また大規模な調節池計画を有する河道は極めて稀であり，これまで高い信頼度で用いられてきた福岡ら2)の洪水流解析法がそのまま荒川中流部に適用出来るか明確でない．