広島高専における新入生全員を対象とした計測·制御教育の試み

摘要

高等専門学校(以下，高専)は，実践的·創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関学校である。高専では，中学校卒業者を受け入れ，早期の専門教育を5年間行うことで，一般科目と専門科目をバランスよく配置した教育課程により，技術者に必要な豊かな教養と体系的な専門知識を身につけることができる。そのため，平成26年度の志願者数は，全国51高専全体で約1.9倍であり，少子化が進む日本において高い志願倍率を保っている。広島商船高等専門学校(以下，本校)においても，志願者数が増加している。その中で，平成22年度に入学者数が定員の120名に対して，155名が入学することになった。そこで，平成22年度から混合学級をスタートすることとなった。平成3年の高専設置基準の改正に伴って，各高専の教育理念に基づいた独自の教育課程の編成が促進されるようになり，全国の高専でも下級生の学科の壁を取り除いた混合学級を導入している学校は多くある。本校が混合学級を導入した理由として，本校では商船学科，電子制御工学科，流通情報工学科の3学科(1学科40名)で構成されているが，平成22年度の新入生が予想をはるかに超える155名となり，原級留置者7名を含めると162名となり，1学科が約56名になったため受け入れを対応することができるのかと多くの教員が疑問を持ち始めた。そこで，急遽,校長を中心に混合学級の導入が決定された。他の高専のように何年も混合学級の導入を審議して始めたものではなかった。当初は，1年間だけの特別措置と考えられていたが，学生からのアンケートで存続の要望が多かったため，次年度以降も継続して1,2年生において混合学級を継続している。混合学級を開始して，それまであまりなかった他学科との交流が生まれてきた。これに伴い，平成26年度より新入生を対象に全学生が本校の各学科のことを学習する基礎実習がスタートした。本校には，練習船やカッター等の設備を保有している。しかし，これらの設備は，これまで商船学科の授業，クラブ活動等にしか使用することがなく，電子制御工学科や流通情報工学科の学生が授業で使用することはなかった。基礎実習を行うことで，所属学科以外のことを知り，幅広い知識を身につけることができる。本報告では，筆者らが担当した電子制御工学科担当の計測·制御についての実施内容を紹介し，授業実践を行った報告を行う。また，実習での学生へのアンケート結果を集計し，客観的な授業評価を行った。集計データから，学生の計測·制御に対する理解度を分析した。