卓上遠心機を用いた微小くぼみアレイ上への脂質二重膜の形成手法に関する研究

摘要

本稿では微小くぼみを持つマイクロアレイのくぼみ開口部に脂質二重膜を形成する手法として，卓上遠心機による遠心力を利用する手法を提案し，実現可能性を検証する実験を行った.微小くぼみを持つマイクロアレイ上に水溶液を載せ，遠心力によって水溶液を飛ばすことで微小くぼみ内に水溶液が単離し液滴化することを確認した.その後，リン脂質溶液とバッファ水溶液を順にかけることで，接触法によって微小くぼみ開ロ部に脂質二重膜が形成されることを確認した.さらに，単離した液滴内に膜タンパク質α-Hemolysinと蛍光分子Calceinを溶解しておくことで，時間経過に従ってCalceinの蛍光強度が弱まっていくことを確認した.これは形成された脂質二重膜上にα-Hemolysinが構成され，時間経過とともにα-Hemolysinのナノポアを通じてCalceinが膜の外へ流出したためと考えられる.また，α-Hemolysinの含有澳度を変えることで蛍光強度の時間変化に違いが見られた.このことから提案手法によって脂質二重膜形成が形成され，形成された膜および膜中に構成されたα-Hemolysinが機能していたことが示唆された.今後，長期的かつ継続的な観測を行うことで，膜形成の実現性をより詳しく検証していく.