錯視効果が人の重量知覚に与える影響に関する研究

摘要

視覚と重量知覚とのクロスモダリティ(感覚相互感作用)に関する研究が各所で行われている.例えばbrightness-weight illusion(明るさ重さ錯覚)という，物体の明度の差異が人の重量知覚に影響を与える現象がある.この現象は明度が明るい物体の方が軽く感じるというものである.また明度以外にも，size-weight illusionという大きさが大きい物体の方が持ち上げた時重く感じるという現象や，物体の表面が粗く光沢が鈍いほど重く感じる現象が知られている.特に明度に関しては人為的な操作が比較的容易なので様々な応用研究がなされている.例えば，工場作業において使用していた黒い箱を白い箱へと変更したことで労働者に疲労軽減効果が確認されている.また同一の物体について，ヘッドマウントディスプレイを使用し画像処理によって対象物体の明度を人為的に変化させた場合についても，人の重量知覚に上述のような影響が生じることが知られている.