External タレットに働くスラム力の基礎研究: Deadrise Angle による影響

摘要

近年の海底油田開発は，より大水深での開発へと移行している．大きな水深下では着底式の生産設備の建設が難しく，浮体式設備による生産が一般的である．浮体式設備の代表格であるFPSO（Floating Production, Storage and Offloading system）は，洋上にて石油の生産から貯蔵，積み出しまで行うことができる施設であり，浮体式海洋石油・ガス生産設備の6割以上を占めている1)．FPSOに用いる係留方式としては，タレット方式が一般的であり，中でもExternalタレット係留方式は，浅水域や穏やかな海域ではとりわけ一般的な係留方式で，東南アジア等のモンスーン地域では多く使われている．スラミングにより船首部外板を損傷したSchiehallionの事故など，スラミングによるFPSOの事故事例が見受けられることから，FPSOに適用されていた従来の船舶の安全基準とは異なる安全基準を満たす必要性が指摘された2)．そこで，FPSOに発生するスラミングについてのガイド，計算手法，リスク評価手法を発展させるため，”SAFE FLOW”プロジェクト2)が行われた．プロジェクトの一環として，スラミングによる係留索破損の危険性がある，Externalタレットに働くスラム力，圧力の計測試験が行われた．この試験では，deadrise angle（Fig. 2参照）が0°（平板）及び20°（円錐）のタレット模型（タレット底面の模型）を模型船に取り付けて波を起こし，スラミング時にタレットに働くスラム力，圧力が計測された．試験結果によると，タレット底面にdeadrise angleをつけることで，つけていない場合と比較してタレットに働くスラム力，圧力を低減できることが示された．しかし，この研究ではdeadrise angleの大きさがどのようにスラム力，圧力に影響を与えるかについては明らかになっていない．また，(1)式で示すスラム力の表現式に含まれ，スラム力評価に用いられるスラミング係数（Cs）について具体的な検討がなく，スラミング係数を使用するシミュレーションでは，（Externalタレットに働くスラム力の）シミュレーション結果の妥当性評価が難しい状態である．