作問学習における思考力・判断力・表現力の自己評価支援機能の継続的な利用と分析

摘要

近年，高等教育における思考力・判断力・表現力の育成が重要視されており，今後，大学でも思考力・判断力・表現力の育成を重要視した授業の実施が求められると予想される．しかし，学習者が主体的に思考力・判断力・表現力を向上するための学習方法や授業実践に関する研究は少ないのが現状である．一方，著者の一人は，学習者が問題を作成し，その問題を学習者同士で相互に解答・評価することで理解を深める作問学習を大学の授業等で実践してきた．先行研究では，作問学習による授業外学習時間の増加や記述式の一部の問題の得点の向上が確認されたが，作問学習による学習効果は完全に明らかになっていない．そこで，我々は作問学習を通した学習者の思考力・判断力・表現力の向上を目的とした作問学習プロセスを提案してきた．この作問学習プロセスは，作問学習を自己調整学習の観点からモデル化し，4 つのフェーズ（学習者の現在の理解度の認知を促す自己認知フェーズ，向上させたい能力などの選択を行う目標設定フェーズ，問題の作成・登録，相互評価を行う作問/相互評価フェーズ，自己評価や他者評価をもとに振り返りを行う振り返りフェーズ）に分けている．本稿では，振り返りフェーズで思考力・判断力・表現力を自己評価できる機能を開発し，大学の授業で継続的に利用した結果について報告する．