杭州市の都市変容と住環境改善段階に関する研究（2):望江地区の城中村を中心とした生活領域の実態

摘要

中国では、近年不動産開発が国の支持産業とされる背景の中、都市の急速のスプロール化が進hでいる。都市周縁部に位置する農村戸籍である村は、開発コストが高いため外周から開発が先行している。その結果、農村が都市に囲まれて無秩序で劣悪な住環境が広がる「城中村」が次々と形成された。城中村は農村部の土地として土地の集団所有が許され、かつての村民達が低賃料で住居を提供する不動産経営を行っており、都市住民や出稼ぎ農民の受け皿になっているため、現状でのそういった役割を踏まえつつ住環境改善の手法を考える必要がある。「杭州市の都市変容と住環境改善段階に関する研究（1)」では、城中村の劣悪な居住環境の改善を拒む原因として、①廉価な賃貸住宅を求める出稼ぎ農民と生活の糧となる収益を求める大家の両者のニーズの合致、②量の供給を目的とした大家の増改築による複雑な空間構成と権利関係、の2点を挙げた。しかし、今後経済力の向上により量から質を重視するように時代が移行する中では、権利者ごとに住環境へ求めるニーズを整理することが住環境改善を考える上での基礎となる。また、一様で面的に広がる劣悪な環境で、居住者の多くが大規模開発を求める状況下で住環境の改善手法と事業主体を計画するには、城中村のみで改善を考えるのは限界がある。