デンマークの住宅政策と住宅手当

摘要

これまで、デンマークの住宅に関しては、高齢者居住、社会住宅等について優れた研究が重ねられているが、それらがデンマークの住宅事情、住宅政策全体の中でどのような位置にあるかが十分に紹介されてこなかった。それにはいくつかの理由があるが、いずれにしてもデンマークの包括的な住宅事情と住宅政策が把握されてこなかったといえよう。また、EUの中でも経済活性化は目覚ましいものの失業率は日本よりも高く（ 2011年6.13%）、居住保障の面からどのような対策がなされているかを明らかにしておくことは、日本の貧困問題への有用な資料となるだろう。これについては住宅政策ではなく社会サービス政策における住宅手当制度が実施されている。他方1980年代～90年代にかけて、英国のサッチャー政権下、公営住宅団地の住宅改善における住民参画や、公共住宅の直接供給から第3セクターによる住宅供給といった課題に対するモデルとして、デンマークが注目されていた。