HAN系推進剤SHP163を用いたアークジェット型電極を有する化学推進機の試作と性能評価

摘要

現在，人工衛星の姿勢制御や軌道変更にはRCS(Reaction Control System)スラスタが用いられている．RCS スラスタには従来，推進剤としてヒドラジンが用いられてきた．一般的にヒドラジンはイリジウム系の固体触媒と共に用いられている．予熱した固体触媒にヒドラジンを接触させ，発生したガスをノズルによって空気力学的加速を行うことで推力を得ている．このようにヒドラジンを用いた推進系のシステムは簡易的であり，今までに多くの人工衛星や宇宙機に搭載され，高い信頼性を得ている．しかし，同時にヒドラジンは高い発癌性を有しており，取り扱いにはプラグスーツや毒物を扱うための施設等が必要となる．そのため，衛星開発のコスト，取り扱いの点において問題を抱えている 1)．そこでこのヒドラジンに代わる HAN(Hydroxyl Ammonium Nitrate)系低毒性推進剤SHP1632)がISAS/JAXAにおいて開発された．本研究室においてもこのSHP163を用いた研究を進めている．SHP163は他のHAN系推進剤に比べると高比推力，高密度，低凝固点といった特徴を有しており，衛星のシステムを構成する上で優れた性能を有している．しかし，断熱火炎温度が非常に高く，高酸化雰囲気を形成するために従来の固体触媒は劣化や粉砕することが報告されている .