大気マイクロPIXE分析法による時分割捕集された大気中微粒子の元素組成分析

摘要

地球規模の大気環境越境汚染の指標として、大気中微粒子(Particulate Matters:PM)がしばしば用いられる。越境汚染の起源推定には、気象条件や環境要素を加味しながら、PMの化学組成因子を分析することが有効な手段とされている。とりわけ元素組成は輸送過程における化学反応の影響による情報散逸リスクに比較的ロバストであり、粒子起源ならびにその経路を反映する特徴量を有する。反面、気象条件が短時間で変化しやすい風土においては、PMの濃度変化は１時間程度のタイムドメインにおいて変化することが確認されているが、この程度の時間間隔でのPM濃度は極めて微量であり、ICP-MS, ICなどの汎用的な元素組成分析手法において十分な感度があるとの結論に至っていない。他方、イオンビームを用いた高感度組成分析法である荷電粒子励起特性X線分析法 (Particle Induced X-ray Emission:PIXE)では、低濃度の大気環境科学や鉱物鉱石など地球科学分野の試料の分析に多数の応用が報告されている。今回、イオンマイクロビームをプローブとした PIXE 分析法の応用により、１時間を単位時間間隔とする PM 捕集試料に含有される元素組成を分析した。特に今後の起源推定を進める上で重要なスペクトル解析例とマイクロビームによるイメージング例について報告する。