栃木県の酒蔵の工程における設え地域産業におけるものづくりの空間に関する研究(4)

摘要

地域産業においては、近隣で産出する素材を用いて、都市や自然の環境を利用してものづくり行われ、素材から製品までの工程において空間が合理的に設えられ、生産の風景が都市景観の一部になっている。なかでも日本酒を造る酒蔵は、良質な水が手に入る自然環境と消費や運搬に適した都市環境との関係で立地し、酒造りに適した温湿度のための換気などの建築的な工夫、道具や設備が合理的に設えられた空間を持つ。また近年では、仕込み蔵でのコンサートや、中庭を会場としたマルシェなどの、酒蔵を地域に開放する「蔵開き」が各地で行われている。そこには、生産されるモノと地域の繋がりをみることができ、近代産業で分断されたモノ・建築・都市の関係性を再構築する手がかりが得られると考えられる。まず本編では、酒蔵の工程における設えの特徴を明らかにする。