建材・建築部品の海外生産拠点の設立要因建材・建築部品のグローバリゼーション その５

摘要

以上、アンケート調査とヒアリング調査の回答の集計・分析を行った。今回の調査によれば日本の建材メーカーが海外工場を設立した要因は三つに整理できる。まず、東南アジア諸国や中国で建材等の需要が増加したことである。国内需要が減少したことも一因ではあるが、それ以上にそうした国々での大幅な需要増加が見込まれたことから、日本から輸入するのではなく現地生産に踏み込hでいる。その一方で、建材等の逆輸入を意図した国内工場の海外移転がある。つまり、材料調達が安易であることや人件費が安価であるといった優位性に加え、1990 年代前半までは長期的に見ると円高が進hだこともあり、輸送費を考慮してもコストダウンを図れた。さらに、他産業に向けた海外工場の設立に伴って、建材等の生産が始まった場合がある。具体的には、汎用的な材料であるガラスで、こうした形で設立された海外工場が少なからず存在していた。このような海外工場の設立という取り組みは、日本の建材メーカー自身にも影響をもたらし、例えば外国人が代表を務めるような会社も現れた。このように建材メーカーの生産活動はドメスティックな活動からグローバルな活動へと変化してきているが、そうした展開に伴って為替変動や国際的な貿易紛争の影響を直接受けるという新たなリスクも生じ始めていた。