藤森照信の茶室作品における建築素材

摘要

藤森照信は歴史家であり建築家である。茶室作品を多く手がけており、そこでは使用されている素材や用い方、工法が現代の建築産業がおこなっている工業製品を組み合わせる施工方法とは異なり特徴的である。藤森の作家論の研究としては作家の言説のみから分析された研究はあるが作品の空間構成についての研究は行われていない。また茶室研究としては現代茶室の伝承性に着目した研究や構成要素から茶室の意匠様式について分析した研究はあるが特定の建築家に関してその素材や工法について研究されているものはない。そこで本研究では藤森の茶室作品に使用されている素材に着目して研究を行い、藤森の茶室作品対象設計手法を捉えることによって特徴を明らかにすることを目的とする。研究対象は藤森の全建築作品のうち茶室または茶室を内包した建築作品24 作品とする（表１）。研究対象作品の空間構成や素材について分析し伝統的茶室との違いを明らかにする。藤森の茶室作品解説文における材料に関する言説のテキスト分析を行いそれぞれの材料の藤森の意図について位置づける。さらにその使用されている素材と工法の関連性について結論を導く。